この映画について

本作品は2019年制作、クリスチャン映画監督のリッチ・クリスティアーノ監督制作の傑作の一つであるクリスチャン映画です。
聖書の霊的な真理に対して無関心である現代の若者達に、真剣に向かい合うよう訴え続ける若い教師夫婦の奮闘を描いており、若き教師ブランドンは教会ユースの指導方法をリサーチするも、現代の一般的な教会ユースの活動傾向に大きな疑問を感じ、苦悩します。これは映画を超えて、現実に多くの教会が直面する問題でもあります。また聖書が教える真理よりも、多くの信者の獲得を優先させて利益や体裁ばかりを追い求める教会など、世俗的な流れに流され真理を見失う現代のキリスト教会に対する痛烈なメッセージが含まれています。

タイトルの「笛を吹け」はマタイの福音書11章16-17節のイエスの教えであり、一見では理解と解釈が困難な箇所ですが、この映画の核心的メッセージであり、映画内において丁寧に解説されます。この映画は短時間で多くの問題が展開し、その一つ一つにクリスティアーノ監督は丁寧に聖書的回答を示しています。その紐付けは見事で、1度見ただけで全ての繋がりを理解するのは困難なほど巧みに場面が散りばめられており、するめイカのように噛めば噛むほど味が出る類の映画です。時間が許せば、是非複数回御覧ください。

あらすじ

ある日、教会のユースの授業に向かう教師ダニエルの元に訃報が届く。ブランドン・コッブ牧師が召された。
ブランドンは6年前、ユースに参加するダニエルの教師だった。当時、別の教会で牧師に選任されたブランドンは、敢えて自分が育った教会のユース教師の職を選択し、妻リサと共に仕える。ダニエルを筆頭にテディーやシャノンなど神や聖書を軽視する生徒たちにブランドン夫妻は大苦戦。しかし、粘り強く教え続けるブランドンとリサに対し、生徒たちは真理に目を向け始める。

字幕制作：

字幕翻訳：堀江正
監修：小川政弘（字幕翻訳家。クリスチャン映画を成功させる会代表）

聖書的なポイント（ネタバレあり、クリックで表示します）

本作は聖書的ポイントが数多く散りばめられている素晴らしい作品です。主題は映画のタイトルである聖書箇所、マタイの福音書11章16-17節です。この箇所を1度読んでもイエスの意図をすぐに解釈できる人は多くないかと思います。映画の中でもこの箇所を丁寧に説明しますが、この聖書箇所は "私が笛を吹いたのに、あなたは踊らない。私が弔いの歌を歌ったのに、あなたは悲しまない" で、"笛を吹く" というのはイエスの福音、"弔いの歌" は洗礼者ヨハネの悔い改めのメッセージを指しています。それらに対するユダヤ人の反応は "踊らない" と "悲しまない"、つまり無関心でした。
キリスト教に関して無関心な人は多いですが、教会で礼拝を守るだけで安心しているクリスチャンも多いです、しかしイエス・キリストは「与えられたメッセージに対して明確に応答しなくてはならない」と教えています。しかも福音と悔い改めの両方への応答です。自分の罪を悔い改めて、福音を信じれば救いを得て、その救いを失うことはありません。しかし、口で「信じる」と言いつつ、応答となる行動が伴わなければ、その信仰は死んでいる（ヤコブ書2章17節）のであって、その人は救いを失うのではなく、最初から救いを得ていないのです。この聖書箇所は、未信者はもちろん、多くのクリスチャンも震え上がるくらい恐ろしく重大な聖書箇所だと本作は教えます。映画の中で「応答」となる行動は、リスのウェバー店長への謝罪、テディーのナタリーへの謝罪、そしてマーシーの告白、そして白旗を掲げるシーンで描かれています。
もう一つこの作品の重要なポイントとして、聖書が教える真理よりも、多くの信者の獲得を優先させて利益ばかりを追求するキリスト教会に対して警鐘を鳴らしています。
ユースの指導法を調査したブランドンは、聖書を排除してでも楽しいイベントを優先させてユース参加者を集めようとする現代の流れを警戒します。また、金持ちであるシャノンの親を失う事を恐れたマイケルズ牧師は事態の収束を無実のブランドンを解雇することで図りました。これはまさに無実のヨセフが投獄された創世記の話に類似しており、マイケルズ牧師の教会は真理よりも教会の利益を優先させました。このように、神の言葉が持つ "力" と "真理" を軽んじ、教会の利益を最優先にする数多くのキリスト教会は、主である神ではなく、お金に仕えており、それは大きな問題です。（マタイの福音書6章24節、1テモテ書6章17-19節）。この映画を見て、心が痛むクリスチャンや教会は多いことでしょう。それがこの映画の目的の一つであると言えます。